トピック

 

・「スマート」なデジタル技術と人間社会

科研(基盤C:2020-2023)

現代日本における都市空間管理の新たな権力形態に関する研究

 

 スマートフォン、スマートゲート、スマートシティというように、私たちの身のまわりには「スマート」な機器やそれを利用した空間が溢れています。「スマート」な機器や空間は、デジタル技術を用いて自動的に人間の動きを作り出したり、止めたりします。たとえば空港ではゲートが瞬時にそこを通過しようとする人間を識別し、通過の可否を判断します。JR東日本の駅では自動販売機が個人の顔を認証し、おすすめの商品を提案します。ここで問題になるのは、デジタル技術を開発したのは人間であるにもかかわらず、当の人間がこのスマートな機器によって判別され動き方、消費行動が作られているという事実です。「スマート」は単に便利な機器であるばかりではないようです。私たち人間は自然を改変し、物を作り出してきた理性を持つ主体であるはずなのに、物によって、デジタルによって動かされたり、判断させられるという事実は、何を示しているのでしょうか。

 2000年代の英語圏人文学で一大潮流となっている物質論的転回、デジタル論的転回、そしてポスト人間中心主義の枠組みで考えています。

 

 ・戦後の生活改善運動と新生活運動

 第二次世界大戦後、アメリカの民主主義イデオロギーの流入にともなって、日本全国で生活の改善と自分で判断できる合理的主体の創造をめざす、広義の「生活改善運動」がさまざまな省庁や団体主導で展開します。この運動の最も大きな効果は公/私、男/女の社会的区分を明確化したことにあります。しかも女性が従事すべき私的な問題は生活改善運動をとおして公的な問題とされるというように、公私も単純な区分で理解できるものではありません。この研究ではフェミニズム理論を利用した女性の女性化の問題とともに、この運動が衛生、栄養学、家族計画などいわば再生産に大きな関心を注いでいたことをミシェル・フーコーの規律権力と生権力の交叉する地点として生活改善運動を分析します。

  

 ・ポスト人間中心主義と場所と自然